格闘ゲームの歴史:空手道からストリートファイター6まで
1970年代のボクシングゲームと1984年の空手道に始まり、ストリートファイターII、モータルコンバット、バーチャファイター・鉄拳、スマブラ、ストリートファイター6へと続く対戦格闘ゲームの歴史と設計の特徴をまとめます。
格闘ゲームは、2人のキャラクターが1つの画面で向かい合い、技を繰り出し合って先に相手の体力をなくした方が勝つジャンルです。ゲームセンターで硬貨1枚を入れ、見知らぬ相手と腕を競い合う文化から始まり、今ではオンライン対戦や世界規模の大会へとつながっています。
この記事では、格闘ゲームの定義と起源、1990年代初頭にストリートファイターIIが巻き起こしたブーム、3D格闘ゲームの登場、2000年代の低迷とコミュニティの力、そして2000年代後半以降の復活までを時代順に見ていきます。代表作の表と、ジャンルを形作る設計要素もあわせて整理します。
格闘ゲームとは何か
格闘ゲーム(対戦格闘ゲーム)は、通常1対1で戦い、制限時間内に相手の体力ゲージを0にするとラウンドを取る仕組みです。多くは3本勝負で2本先取といったラウンド制を採用し、防御(ガード)、投げ、反撃、そして複数の攻撃を途切れなくつなぐ「コンボ」が基本要素です。
複数の敵を順番に倒しながら前へ進む「ベルトスクロールアクション(ベルトスクロール型ビートエムアップ)」とは別のジャンルとして扱われます。格闘ゲームの核心は、1人の相手との距離を測り、相手の選択を読み、正確な入力で技を出すことにあります。下位分類には、2D格闘、3D格闘、複数のキャラクターを交代しながら戦うタッグ格闘、相手をステージの外へ吹き飛ばす「プラットフォーム格闘」などがあります。
起源:ボクシングゲームとカンフー映画
初期の格闘ゲームは、ブルース・リーの『死亡遊戯』(1972)や『燃えよドラゴン』(1973)といった香港のカンフー映画から大きな影響を受けました。トーナメントに集まった達人たちが順番に戦うという構造は、その後このジャンルの基本的な物語の枠組みになります。
拳で戦うゲームの始まりはボクシングゲームでした。セガが1976年にアーケードで発売した『ヘビーウェイトチャンプ』が殴り合いを扱った最初のビデオゲームとされていますが、スポーツゲームに近いものでした。任天堂の『パンチアウト!!』(1984)は、ガードと回避、体力ゲージを備えていました。
1対1の格闘ゲームの枠組みを確立したのは、1984年にテクノスジャパンが開発し、データイーストが発売した『空手道』(海外名『Karate Champ』)です。2本のジョイスティックでさまざまな技を出し、3本勝負2本先取で勝敗を決め、同じ年に登場した対戦版では2人が直接戦うことができました。同じ年のコナミの『イー・アル・カンフー』は、見た目も戦い方もそれぞれ異なる相手を登場させ、空手道のポイント制の代わりに体力ゲージを採用して、その後のジャンルの標準を作りました。
1987年、カプコンは西山隆志が企画した『ストリートファイター』を発売しました。操作を試してみないと発見できない「必殺技」が神秘性を与えましたが、入力を正確に認識するのが難しく、思いどおりに技を出すのは困難でした。
ストリートファイターIIと1990年代初頭のブーム
1991年の『ストリートファイターII』は、ジャンルの転換点です。岡本吉起が率いたチームはレバーとボタンの入力をはるかに正確に読み取れるようにし、複数のボタンを組み合わせた必殺技を安定して出せるようにしました。個性あふれる複数のキャラクターから1人を選び、何よりも人と人とが戦う対戦が中心になりました。熟練プレイヤーたちが攻撃の合間の隙をつなぎ、相手に立て直す暇を与えずに攻撃し続ける方法を見つけたことで、「コンボ」という概念もこのゲームから広く浸透しました。
ストリートファイターIIの成功のあと、多くのゲームが次々と登場しました。
- 餓狼伝説(1991、SNK):初代ストリートファイターを企画した西山隆志がSNKで手がけた作品で、手前と奥の2ラインを行き来するシステムを取り入れました。
- モータルコンバット(1992、ミッドウェイ):実際の俳優を撮影して作ったキャラクターと、残虐なとどめの技「フェイタリティ」で、話題と論争を同時に巻き起こしました。
- ザ・キング・オブ・ファイターズ'94(1994、SNK):3人で1チームを組み、順番に戦うチーム対戦方式を導入しました。
3D格闘ゲームの登場
1993年のセガAM2の『バーチャファイター』は、3Dポリゴンのキャラクターと、動きに合わせて回転・拡大するカメラを備えた初の3D格闘ゲームと評価されています。ボタンが3つだけで覚えやすい一方、奥深い攻防で日本のゲームセンターで大人気を博しました。
1994年にはナムコの『鉄拳』が登場しました。手足にボタンを1つずつ対応させた直感的な操作が特徴で、1995年のプレイステーション移植によって、このゲーム機の初期の成功に大きく貢献しました。『鉄拳2』(1995)からは、横に避ける動きが本格的に使われるようになりました。続いて、武器を使うナムコの『ソウルエッジ』(1996)、テクモの『デッド オア アライブ』(1996)が登場しました。
1990年代後半には、別々の作品のキャラクターが一堂に会するクロスオーバーも人気を集めました。1996年の『X-MEN VS. ストリートファイター』はその後『マーヴル VS. カプコン』シリーズへとつながり、1999年の任天堂の『ニンテンドウオールスター!大乱闘スマッシュブラザーズ』は、体力の代わりに相手をステージの外へ吹き飛ばすと勝つという新しい方式を打ち出しました。
2000年代:低迷とコミュニティの力
2000年代初頭、格闘ゲームは低迷期を迎えました。シリーズを重ねるほどシステムが複雑になって新規参入が難しくなり、似たようなゲームが多すぎ、家庭用ゲーム機が強くなるにつれてゲームセンターも減っていきました。
それでもジャンルは消えませんでした。アークシステムワークスの『ギルティギア ゼクス』(2001)はアニメ調の華やかな2Dグラフィックで高い評価を受け、カプコンとSNKが手を組んだ『CAPCOM VS. SNK』シリーズも登場しました。何よりもプレイヤーコミュニティが大会を続けていきました。アメリカのEvolution Championship Series(Evo)のような大会が成長し、2004年のEvoで梅原大吾が『ストリートファイターIII 3rd STRIKE』で相手の連続攻撃をすべてブロッキングで受け止めた場面は「Evo Moment 37」と呼ばれ、今も語り継がれています。この場面はインターネット動画で広まり、格闘ゲームの大会文化を知らしめるきっかけになりました。
時代別の代表作一覧
| 年 | ゲーム | 開発会社 | 意義 |
|---|---|---|---|
| 1984 | 空手道 | テクノスジャパン | 1対1格闘ゲームの枠組み |
| 1987 | ストリートファイター | カプコン | 必殺技の導入 |
| 1991 | ストリートファイターII | カプコン | 正確な入力、キャラクター選択、コンボ |
| 1992 | モータルコンバット | ミッドウェイ | 実写グラフィックとフェイタリティ |
| 1993 | バーチャファイター | セガAM2 | 初の3Dポリゴン格闘 |
| 1994 | 鉄拳 | ナムコ | 手足対応の操作、3D格闘の大衆化 |
| 1994 | ザ・キング・オブ・ファイターズ'94 | SNK | 3対3のチーム対戦 |
| 1999 | 大乱闘スマッシュブラザーズ | HAL研究所 | プラットフォーム格闘という分野 |
| 2001 | ギルティギア ゼクス | アークシステムワークス | 高解像度のアニメ調2D |
| 2009 | ストリートファイターIV | カプコン | ジャンル復活のきっかけ |
| 2023 | ストリートファイター6 | カプコン | 初心者向け操作と新たな隆盛期 |
復活と現代の格闘ゲーム
2000年代後半、ジャンルは再び息を吹き返しました。2008年の『大乱闘スマッシュブラザーズX』、2009年に家庭用で発売された『ストリートファイターIV』が好評を博し、オンライン対戦や動画プラットフォーム、ライブ配信がゲームセンターの穴を埋めました。そのおかげで、1990〜2000年代に日本中心だった大会の勢力図が多くの国へと広がりました。
オンライン対戦で最も重要な技術は「ロールバックネットコード」です。相手の入力が遅れて届いても、まず予測して進行させ、実際の入力が届いたらその時点まで巻き戻して再計算する方式で、オープンソースのライブラリGGPOが代表的です。この方式のおかげで、遠く離れていてもゲームセンターに近い感覚で対戦できるようになりました。
2018年にはNintendo Switch用の『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』が発売され、2020年代半ばには『ストリートファイター6』(2023)、『モータルコンバット1』(2023)、『鉄拳8』(2024)が相次いで登場し、新たな隆盛期を迎えました。特にストリートファイター6は、簡単な入力で必殺技を出せる「モダン操作」を導入し、初心者の参入障壁を下げました。韓国も鉄拳を中心に世界的な選手を輩出してきた地域です。
格闘ゲーム設計の核となる要素
- フレームデータ:多くの格闘ゲームは秒間60フレームを基準に、技が出るまで、当たっている間、硬直から回復するまでのフレーム数を定めています。この数値が、どの技が速く、どの技がリスキーかを決めます。
- じゃんけん構造:打撃は投げに、投げはガードに、ガードは打撃に強いというように、互いに有利不利が循環する関係を作ることで読み合いが生まれます。
- キャラクターバランス:数十人のキャラクターがそれぞれ異なる強みを持ちながら、一方が強くなりすぎないよう調整する必要があります。オンライン時代には発売後もパッチで調整を続けます。
- 入力と操作:レバーを半回転させるコマンド入力は上達の楽しさを与えますが、入門を難しくします。最近のゲームは簡単操作をあわせて提供することが多くなっています。
- ゲージ資源:攻撃したり攻撃を受けたりすると溜まるゲージで強力な技を使えるようにし、逆転の可能性と資源管理の判断を加えます。
格闘ゲームは結局、「相手が何をするかを読み、それに合った答えを正確に出す」対話に近いものです。